新型コロナウイルス感染症拡大に伴う出勤抑制のひとつとして、ワーケーションは広く利用されるようになりました。
今後も、新しい働き方としてICTを活用したワーケーションを普及させ、柔軟に時間や場所を選べる働き方の実現を政府は推進しています。
ワーケーションの歴史
ワーケーションは、もともと2000年代にアメリカで提唱された新しい働き方でした。
アメリカでは従業員に年次有給休暇を与える法的義務がなく、取得率も低かったため、従業員の有給休暇取得率向上、そして長期休暇取得推進を目的としてワーケーションが提唱されるようになったのです。
ホテルやリゾート施設にはOA機器やインターネット回線が設置された「ビジネスセンター」が設けられ、家族と休暇を楽しみながら仕事ができる環境の整備が進められました。
「働き方改革」成立で日本でも注目
2017年ごろになると、ワーケーション誘致に長野県や和歌山県などの自治体が乗り出し、日本航空株式会社といった民間企業もワーケーションを導入し始めました。
このような流れを受け、年次有給休暇取得率が低いことを問題視していた政府が2018年に働き方改革関連法案を成立。
さらに、新型コロナウイルス感染症の流行も重なり、観光業界や地方自治体が移住者誘致や観光客誘致に力を入れるようになったのです。
2021年に厚生労働省から発出された「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」では、ワーケーションもテレワークの一形態とされています。
参考:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」
ワーケーションの種類
ワーケーションには、大きく分けて2種類あります。
「休暇型ワーケーション」と「業務型ワーケーション」です。
- 休暇型ワーケーション
休暇型ワーケーションは、仕事というよりは、休暇が主な目的とされています。
有給休暇と組み合わせながら、リゾート地などに長期間滞在してテレワークをするといった働き方が、これに該当します。
福利厚生の一環としても取り入れられるケースが多い手法です。
- 業務型ワーケーション
業務型ワーケーションは、業務主体のワーケーションとなります。
業務型ワーケーションには、オフィスではない場所で、グループワークなどを実施する「合宿型」、シェアオフィスやサテライトオフィスで業務をする「サテライトオフィス型」、地域の関係者と交流しながら、地域課題解決策をともに考える「地域課題解決型」などがあります。
ワーケーション導入時のポイント
「ワーケーションを導入してみたい」と思ったら、情報収集から始めましょう。
まずはワーケーションがどのようなものか、全体的なイメージを掴むことが大切です。
自社のテレワーク実施状況はどうか、ワーケーションを導入するための体制は整っているか、また自社の業務内容がワーケーションに適しているかも重要なポイントです。
ワーケーションの全体像が掴めたら、なんのためにワーケーションを導入するのかを明確化し、それに沿って労務管理のルールを確認します。
申請や承認のルール、勤怠管理システムの改修、就業規則の整備なども忘れてはいけないポイントです。
環境が整ったら、従業員に対する説明を行いましょう。
全社への一斉導入に不安がある場合は、実施しやすい部門や職種から順次スタートさせるのもいいでしょう。
時期を見て効果測定・検証を行い、課題となっている点を把握し、見直しを行うことも必要です。
社内アンケートなども活用してくださいね。
ワーケーションのメリット・デメリット
企業と従業員がお互いを信頼し、より高い成果を目指すひとつの方法として注目されているワーケーションですが、実施する際にはメリットとデメリットを正しく理解しておくことが必要です。
メリット
ワーケーションには、仕事とプライベートのメリハリがつきやすく、環境が変わることで五感が刺激され、仕事に対するモチベーションが向上するメリットがあります。
新しいアイデアが浮かんだり、生産性が向上したりする効果も期待できます。
仕事時間外には出かけるほか、アクティビティを楽しむケースも多く、従業員の健やかな生活実現にもつながるでしょう。
デメリット
デメリットとしては、慣れない土地で集中して仕事ができない、会社側の制度整備が追いついていないなどが考えられます。
また、ワークライフバランスを個人の裁量に任せることになりますから、高いリテラシーが求められ、思うように成果が上げられないケースもあるでしょう。
仕事と同時に余暇も堪能できるワーケーション
働き方改革が進み、リモートワークやテレワークを導入する企業が増え、今後ワーケーションもより普及していくかもしれません。
仕事とプライベートを充実させるワーケーションという新しい働き方に、今後も期待が集まりそうですね。