毎年、11月の酉の日に行われる酉の市では、熊手が縁起物として販売されています。
今回は、酉の市の起源や、縁起熊手の由来について解説します。
幸せをしっかり「わしづかみ」できるようにと縁起熊手に願いを込めて
熊手は、熊の手のひらのように広がった木材や竹で作られた櫛の先端で、落ち葉やゴミをかき集める道具です。
酉の市では装飾された熊手が縁起物のとして販売されていますが、その由来には3つの説あります。
1つ目は、運をしっかりとわしづかみできるように、と鷲がしっかり獲物を捕らえる姿がモチーフとされているというものです。
2つ目は、戦場へと向かう武将が、戦に勝つことを祈って奉納した軍扇が起源という故事が由来とされている説もあります。
勝利を収めて戻ってきた武将のもとに戻ってきた戦扇が熊手のような骨だけの姿になっていたことから、熊手守りは福を招く縁起物とされたというものです。
3つ目は、酉の市の起源とされている武蔵野国南足立郡花又村(現在の東京都足立区花畑)の収穫祭が行われていた大鷲(おおとり)神社の露店で売られていた熊手です。
江戸時代、秋の収穫を祝い、近隣に住む農民たちが大鷲神社に鶏を奉納し、その帰りの境内の露店で竹ぼうきや餅、そして熊手などが売られていたとされています。
そのなかでも実用性の高い熊手が好まれるようになり、縁起熊手へとなったという説です。
江戸時代から続く年中行事である酉の市には、縁起熊手を求めて今も多くの人が訪れています。
「開運招福」「商売繁盛」を願う酉の市
酉の市は、関東を中心に日本各地で行われています。
そのなかでも、関東三大酉の市と呼ばれる「浅草の鷲神社/長國寺」「新宿の花園神社」「府中の大国魂神社」は、関東地方では有名な酉の市です。
浅草の鷲神社と長國寺は熊手の露店は150店、食事や遊びなどの出店は750店もの露店が出店する、日本最大規模の酉の市です。
新宿の花園神社では、見世物小屋が出されることもあり、それを楽しみに毎年60万人もの人が訪れます。
府中にある大国魂神社の酉の市では、毎年約8万人もの人が訪れ、神社の社務所で熊手をいただくことができます。
酉の市は何時から始まるの?
酉の日の午前零時に一番太鼓を合図に始まり、翌24時まで24時間執り行われます。
11月の1回目の酉の日を「一の酉」、2回目の酉の日を「二の酉」、3回目の酉の日を「三の酉」と呼びます。
2022年の酉の日はいつ?
2022年の酉の日は、
一の酉:11月4日(金)
二の酉:11月16日(水)
三の酉:11月28日(月)
となっています。
いざ酉の市へ!熊手を買うときに気をつけたいポイント
「せっかく酉の市にきたのだから」と、張り切って大きな熊手を買いたくなりますが、熊手は小さなものから購入してください。
熊手は、毎年買い替えるものとされています。
最初に大きな熊手を購入して、翌年それよりも小さな熊手に買い替えると、福徳が下がってしまうとされているのです。
また、熊手を購入する際には「粋な買い方」という方法があります。
粋な買い方とは「とにかく値切る」こと。
驚くかもしれませんが、熊手は値切れば値切るほど、縁起がいいとされているのです。
まず、お店の人に「この熊手はいくらですか?」と値段を確認したら、とにかく値切っていきましょう。
一般的に3回値切ったら、購入を決めるというのが粋な買い方とされています。
そして、値切って安くなって浮いたお金は、お店の人にご祝儀として渡しましょう。
この一連の流れで熊手を購入すると「あの人は、粋な買い方を知っているな」となるのです。
熊手はどう持ち帰る?
購入した熊手は、高い位置に掲げるようにして持ちます。
「持ち歩く際に、高い位置に穂先があると迷惑だから」と、熊手を使用するときのように、穂先を下に向けて歩いてはいけません。
多くの福をかき込めるように、高い位置に掲げて帰るようにしてください。
持ち帰った熊手の飾り方
熊手は、持ち帰ったら神棚に飾りましょう。
神棚がない場合は、玄関の入り口に向けて飾るとよいとされています。
また、高いところに飾るのも、ポイントです。
酉の市では「熊手守り」を忘れずに
酉の市というと、縁起熊手のことばかり意識しがちですが、熊手守りを授かるのも忘れてはいけません。
まずは神社に参拝し、熊手守りを授かってから、境内の露店で縁起熊手を買うというのが一般的な流れとなります。
また、1年間福をかき込んでくれた熊手守りや縁起熊手は、熊手納め所にお納めしましょう。
納めた熊手は、祈祷師によって浄められますから、安心して納めることができますね。