2016年に電力が自由化されてから4年が経過しました。現在は私たち消費者が電力会社を自由に選択することができます。ただ、電力自由化により一般の消費者にとって何が変わったのかよく分からない…なぜ電気代が安くなるの?という人も多いのではないでしょうか。
ここではそもそもなぜ電力が自由化されたのかという目的と電気代が安くなる理由、電力自由化のメリットについて紹介していきます。
電力自由化の目的
電力自由化が実施された背景には、大きく3つの目的がありました。なぜ電力自由化が実施されたのか、その目的について見ていきましょう。
電気料金を安くするため
電力自由化前までは、電気料金が高額であると指摘されていました。当時は地域ごとに大手電力会社が独占的に電力を供給し、電気料金は経済産業省の認可を得て決める仕組みでした。独占的であったため価格競争が起きないことから、コストの削減は難しく電気料金が安くなることも期待できない状況でした。
また、大手電力会社は発電所や送電網など設備を整えたり、メンテナンスなどで膨大な投資が必要となり、それらの経費は電気を使う私たちから電気料金として徴収される仕組み(総括原価方式)となっていたのも高い理由のひとつです。
そこで、電力市場に市場原理を取り入れて競争させる目的で電力自由化が行われました。電力会社間で価格競争が起きれば、電力会社は自然とコスト削減に取り組むようになり、電気料金が安くなる可能性が出てきます。
電力供給に伴う付帯サービスを増やすため
電力に参入する業者が増えることで、電力供給と併せて提供される付帯サービスが増えることも狙いのひとつです。
たとえば、ガス会社や通信会社が電力に参入すれば、自社でもともと提供していたサービスとセットにした割引プランなどを作れます。ポイントがたまるサービスを実施している新電力会社も多いです。IT関連企業ならHEMS(ホームエネルギーマネジメントの略。家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム)を利用した電力の見える化などのサービスもあります。
再生可能エネルギーを増やすため
大手電力会社が提供している電力は主に火力発電により作られたもので、化石燃料を消費しています。化石燃料の使い過ぎは二酸化炭素を増やすため、地球環境に対してあまり良くありません。
電力自由化の実施後、新たに参入してきた新電力会社の中には、太陽光発電や風力発電など環境に配慮されている、再生可能エネルギーで作られた電力を提供しているところも多いです。このような再生可能エネルギーを増やすことも、電力自由化の目的です。
電気代が安くなる理由
電力自由化によって電気代が安くなる主な理由は前述した通り、電力市場に市場原理を取り入れたことによって電力会社間で価格競争が起こりやすくなるからです。
また、異業種からの参入により電力だけではない付帯サービスが増え家計の支出が総合的に削減される可能性が高まる為です。
電力自由化までの経緯
電力自由化が実現されたまでの道のりは簡単なものではありませんでした。続いて、電力自由化が提唱されてから実現にいたるまでの経緯について見ていきましょう。
電力市場に競争原理を取り入れようと提唱されるようになったのは1990年代のことです。当時は世界的にも規制緩和が広く進められていたこともあり1995年に電気事業法が改正され、これをきっかけに電力自由化が進められていきます。
電力自由化はいつから始まったのか?
電力自由化は一度に実施されたわけではありません。大きく4つに分けた上で2000年から段階的に実施されました。
そのうち最初に自由化されたのは、規模需要家と呼ばれる特別高圧区分で契約しているオフィスビルや大規模工場などです。デパートや規模の大きなホテルなどもこれに該当します。
その4年後の2004年には、高圧区分で契約電力が500kW以上の中規模需要家と呼ばれる事業者を対象に自由化されました。主にスーパーやオフィスビルなどで中小規模のものが該当します。
さらに翌年2005年には、同じ高圧区分で契約電力が50kW以上の事業者も自由化されています。
大規模から中規模需要家までは短いスパンで自由化が進みましたが、小規模需要家の電力自由化が実施されたのはそれから11年後の2016年4月です。小規模需要家は低圧区分で契約しているところを指し、わたしたち一般家庭が該当します。事業者でも個人商店やコンビニ、小規模な事務所などは低圧区分で契約しているところが多いです。
電力自由化により消費者が得られるメリット
最後に、電力自由化によりわたしたち一般消費者にとって、具体的にどんなメリットがあるのか見ていきましょう。
多様なプランを選択できる
電力自由化により新規で電力市場に参入した新電力会社は、時間帯別料金プランなど豊富なプランが用意されています。時間帯別料金プランを上手く利用すれば、トータルの電気料金を抑えて今よりも安くできることもあります。たとえば、昼間に自宅にいる時間が短い人なら、昼間は高めで夜間が安めの料金プランを選択するという具合です。
大手電力会社でもそのような時間帯別料金プランはありますが、新電力会社の方が種類は多いため、より自分に合ったプランを選べます。
割引サービスなどでお得になる
新電力会社が提供している他のサービスを一緒に契約することで、割引やポイント付与などのサービスを受けられる場合もあります。たとえば、ガスや電話、プロバイダーなどの業者で多く見られます。割引サービスを上手に利用することで、さらに家計の支出を減らせるでしょう。
再生可能エネルギーを選択できる
大手電力会社と契約している場合には、自分が使う電力を「太陽光発電がいい」「風力発電がいい」などと発電源で選ぶことはできませんが、新電力会社であれば自分で選択できるところもあります。たとえば、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーで作られた電力を選択可能です。そうすれば電気料金が安くなるだけでなく、地球環境保護にも貢献できます。
まとめ
電力自由化は電力会社間で競争原理を取り入れるために実施されました。これまでよりも電気料金が安くなり、サービスもさらに多様化してきています。家計の支出を少しでも減らしたいと考えている人や、地球環境保護に貢献したい人は、電力自由化によるメリットを活用してぜひ新電力会社への切り替えを検討してみてください。
電気代削減シミュレーションをしてみる ▶